第29回日本木管コンクール<フルート部門> 一次予選の審査員講評

高木 綾子

東京藝術大学准教授、洗足学園大学客員教授

20世紀の無伴奏の作品、という課題の1次予選でしたが、5分という制限がある為か、馴染みの曲が多かった様に感じました。

この現代の作品は「何を大切にするか」を見つける事が大きな差になる様に感じました。音色の変化を求められている、感情的叙情的な表現を求められている、リズムの正確さ、おもしろさを求められている。もちろん、それぞれ考える事は異なって当然ですが、ただ、音やアーティキュレケーションの並んだ世界にならず、息のスピードによる音色の違いや、ホールの響きによる間の取り方などなど、1つの曲の中でも多様な世界を魅せられる事が、聴き手の耳を楽しませる演奏になるのではないでしょうか。

今回、とてもレベルの高い演奏が多く、充実した2日間で、これからの2次、3次と期待しております。

 

竹林 秀憲

一般社団法人日本フルート協会常任理事、元相愛大学音楽学部教授

一昨年に続きフルート部門の審査をさせていただいています。本日、初日から若者達のすばらしい演奏を聴くことができました。

前回に勝るとも劣らない高いレヴェルなので、審査にも力が入ります。コンクールは受験者の真剣勝負の場です。演奏会とは違った緊張感が会場に満ちています。皆様、コスミックホールの客席からこの雰囲気を経験してみませんか。そして、舞台上の演奏者を応援してやってください。100パーセント以上の力を発揮してくれること間違いなしです。

 

白尾 彰

元新日本フィルハーモニー交響楽団首席フルート奏者、桐朋学園大学音楽学部名誉教授

日本木管コンクールは国内の他の一流のコンクールと同様大変高い水準にあり、過去の入賞者達はその後もいろいろなところで活躍しています。今年も大変立派な演奏を聴くことができて嬉しいです。楽器をコントールして難曲を演奏するというのはとても難かしいことですが、多くの人達がそれをクリアーしていたと思います。その人達に更に何を望むか?といえば、もっと作曲家の意図しているものに近づこうとする気持ちではないでしょうか。たとえばフルーティストにとってブレスは大切ですが、音楽そのものにとってもフレーズを決定するものであり、ブレスの場所はとても重要です。そうしたことへの配慮がもっと必要でぁるとも感じました。皆さんの更なる進歩を願っております。

 

中川 佳子

京都市交響楽団副首席フルート奏者

平成2年に始まった第1回から今年は平成最後のコンクールになったわけで感慨深いです。初日の早い時間からハイレベルな演奏が続き、沢山の人数を聴く初日もあっという間に終了しました。

テクニックは飛躍的に全体的におそろしく向上していると思います!ここから本選まで残っていく人達というのは曲の世界観をどこまで表現していけるか、だと思います。ものすごく素敵な音楽を聴かせてくれた人が何人もいたので、この後も楽しみです。また今回惜しくも残れなかった方も自分自身の言葉を使った演奏をどこかで聴かせていただくのを楽しみにしています!

 

中野 真理

東京音楽大学准教授

一次予選は、楽に演奏できる曲は皆無でしたが、殆どの人が  難曲を普通にこなしていたという  レベルの高さに感銘を受けました。

しかし 音符を正しく並べることに満足せず 今一度、基礎奏法にしっかり目を向けてほしいと感じます。

例えば 緊張感の必要な 長い持続音が ぶれないこと、それとは対称的に リズミカルな速い動きの中でも (休符を含め)息の流れを真っすぐ保つこと  、 クラシックとは違い、もっと細かくダイナミクスの差を付ける必要があるが、音程が破綻しない…等々  一朝一夕では出来ない事柄です。

「息」は目に見えないですが、より良い演奏をするためには、自分の出している息のスピードや、拍感を明確にイメージできるように日々精進いたしましょう!。

 

萩原 貴子

日本大学芸術学部教授、洗足学園音楽大学客員教授、東京藝術大学音楽学部非常勤講師

全国各地から日本木管コンクールに東条コスミックホールで若いフルーティストの演奏を聞き、自身の若かりし頃の事が鮮明に思い出されました。

「音の中にどんな世界を描き込むか、その音を聞いた人がどんなの感情体験をするのか?」時間と空間に音をデザインするのです。

審査をしていると、技術的な事も聞こえますが、一番大切なのはこの部分だと感じます。

一次審査は20世紀以降のフルートソロ曲が課題。

色彩感を求められるもの、力強さが必要なもの、曲に題がついていて、表現するものが具体的にあるもの、様々でした。工夫のある表現も沢山聞くことができ、レベルの高さを感じる一次審査でした。

フルートを吹く上で技術的なことは、物理的に理解する必要があるし、音楽を表現するということは、音楽の歴史を知り、様式感をふまえた上で、人間の普遍的な心の深い所に響くものを追求することだと思います。

試行錯誤を経て音楽を作る過程で得たものこそ、コンクールを受けたことによる真の成果。参加者全員のパフォーマンスに拍手を送ります!

 

富久田 治彦

名古屋フィルハーモニー交響楽団首席フルート奏者

コンクール御参加の皆さん、第1次予選の演奏ありがとうございました。私はコンクールでいつも様々な感性に出会えることをとても楽しみにしています。

さて今回の第1次予選は自由選択曲でした。とてもレヴェル高い演奏を聴くことができました。

吹きたい曲をここぞとばかりに演奏して、まるで自身の作品のよう、自分の歌のように奏でている姿が見られました。大変素晴らしかったです。

コンクールですので結果は悲喜こもごもですが、一音一音を大切に練習にかけた時間、そしてコスミックホールで演奏したことを忘れないでください。良い思い出として、皆さんのこれからの音楽人生の糧となることを望んでいます。