第37回日本木管コンクール(フルート部門)<一次予選の審査員講評>

高木 綾子

東京藝術大学准教授 ◎審査委員長

全体として素晴らしい暗譜演奏でしたが、暗譜に集中するあまり和声や調性的な表現が薄れ、連符を素通りしてしまう点が惜しまれました。特にフランスものは、フレージングの繋がりや音のソノリテ(響き)を大切にし、リズムにエスプリやジョークを感じさせたいところですので、それが伝えられるテンポ設定をしてください。
また、端陽は中国の楽器、洞簫(ドンシャオ)の奏法をぜひ聴いてみてください。尺八に似た楽器ですが、装飾音符の扱い方のヒントになると思います。
ロレンツォはイタリアオペラを想像し、歌心やドラマティックな要素を取り入れることで、一層華やかな演奏になるはずです。
2次に進まれた方々は、どのような場面でも音色などを意識して音楽表現をされていたと思います。

 

清水 信貴

相愛大学音楽学部教授、神戸市室内管弦楽団首席フルート奏者、一般社団法人日本フルート協会副会長
〇運営委員長

エモーションがあるのは良いのですが、それに溺れて演奏がダメになっている方がおります。やはり何でも「過ぎたるは及ばざるがごとし」ですね。
演奏の速度についてもそうですが、テクニックがあるのはわかりますが、コントロールが効かなくなっては暴走列車のように危険です。聴いている人にはっきりわかるようなクリアーさが必要と思います。
海外に行くと「アーティキュレイション」と言う言葉がよく使われます。
Good sound ,Good music,Good articulation などと上位に挙げられます。
例えばアナウンサーは整然と話して、聞いている人にわかりやすく喋っていますね。これと同じように音楽の演奏もそれぞれのパッセージの意味がはっきり聴いている人に伝わるように演奏したいです。
そして音の粒を際だてる事も大切です。

 

相澤 政宏

東京音楽大学教授、東京交響楽団客演首席フルート奏者

とても上手に吹かれている方が多く、正直既定の人数に絞るのが難しかったです。その中でも色々と感じたことは多くありました。まず、拍子感とフレーズ。無伴奏ですので自由度は大きくなりますし、勿論自由なのですが、その中に作曲家が書いた拍子とフレーズが大切な場所が多くあります。それを関係なく吹いていた人も多く見受けられました。また、隣のフレーズとの関係にも注目していただきたいと思いました。とても良く響くホールですから、速過ぎるテンポで吹き飛ばすと、よっぽど上手に吹かないと音が全く分からなくなる時があります。また、音程にもっと配慮が必要と感じた人も多く見受けられました。響くホールでは、分散和音が和音に聞こえます。音程が悪いと音がホールに響かないことがあります。

 

高橋 聖純

国立音楽大学准教授

一次予選オネゲルを演奏した人はいませんでしたが、6曲それぞれ大変素晴らしい演奏を多く聴かせていただきました。皆さんフルートを演奏する技術が高くレベルは年々上がっていることを実感しました。以前講評で楽譜をしっかりと読み込むことの重要性を仰った先生がおられたと記憶しておりますが、楽譜をしっかり読み込んでいる方も多かったと思います。さて、そこで楽譜を深く読み込んだあとに『その楽譜に書いてあることは一体何を意味しているのか』『それによって何を言いたいのか』ということを楽譜から読み取り、それを自分の言葉として演奏を通して聴衆に伝えることが演奏家として必要になってくるわけですが、そこまでのメッセージ性を持ってfantasy豊かに演奏された方はそんなに多くなかったと感じました。やってもやっても上を目指して探求できる、それも音楽の(演奏の)魅力の一つではないでしょうか。

 

 

中務 晴之

大阪教育大学名誉教授・特任教授

第一次予選は様々な作品が課題でしたが、この素晴らしい音響のホールの響きを察知して、バランス良く、美しく演奏したプレイヤーが少ないのは残念でした。
逆にフォルテは息を入れすぎて音を割り、細かいパッセージは速く演奏しすぎて細かな音符が全くボケてしまう。そんな方が良い結果を得られなかったのでは。
またエラート作品での参加が多かったのですが、どうしてみんな最後のページはあんなに急ぐのでしょう。何か魔法にでもかけられたかのように。
今後、無伴奏作品は構成を良く考え、表現力のあるバランス良いを心かげてください。

 

長山 慶子

元大阪音楽大学教授

第一次予選、お疲れ様でした。予備審査を通過されている方達なのでレベルの高い演奏が多いでした。選択曲を皆さんご自身で選ばれたわけですが、選んだ理由はなんでしょうか?前にやったことがあるから、カッコいいから、一度勉強してみたかったから、、、 様々な理由があると思います。練習していくうちに、よりその曲の面白さや難しさを感じていくと思いますが、特に曲の持つ特徴を上手く表現して、伝えられた方が1次予選に残られたのだと思います。 以下走り書きのメモより安定している、歌心あり、センスアリ、音色のコントロール上手い、フレーズがしっかり見える。構成力、骨格がハッキリしている。音程感がしっかりしている。最後まで惹きつけられた。聴かせるねー。速すぎる、フレーズが見えない、速いパッセージでも表情が欲しい。力みでせっかくの良い音色が!上に跳躍時、上がり切ってない人多い、、、、等色んな感想を持ちました。
これからもたくさん悩んで下さい。音楽に正解はありませんから。

 

橋本 岳人

愛知県立芸術大学教授

一次予選を聴き終えて感じたのは、全体的なレベルが上がっており、予選通過することが困難になっているという点です。当落線上で惜しくも分かれた方も多くいらっしゃったことと思います。その中でも少しアドバイス出来ることを幾つかお伝えしたいと思います。今回一次予選では暗譜指定でしたが、昨今のコンクールでは暗譜が減った為か、少し不安気に吹いていた方がいました。日頃から暗譜慣れをしておくことも重要だと思います。また、それぞれの作品に細かいインフォメーションが書かれていますが、例えばフェルーであれば、話の内容を理解しているか。それらが単なる音符ではなく、しっかりと「音楽」として表現できていたか、ぜひ今一度見直して頂けたらと思います。さらに、かなり速いテンポで吹かれていた受験者も多かったのですが、その分表現が薄くなる方もいたので、テンポ感を再考し、ニュアンスや色彩感を大切にして頂ければ、より音楽の幅が広がると思います。このように良く響くホールでは、アーティキュレーションが不鮮明になり易いので、より音の粒をクリアに吹くことも大切です。参加者の皆さんが、今回の経験を糧に今後さらに飛躍されることを心より楽しみにしております。

 

You May Also Like