山本 正治
東京藝術大学名誉教授、武蔵野音楽大学特任教授、一般社団法人日本クラリネット協会会長 ◎審査委員長
楽器は何の為に演奏するのか。人それぞれ目的は違うかもしれないが、専門家になるなら自分の演奏は聴いている人「聴衆」が評価する。大事なのは聴衆の人達が聴いている曲、演奏家を常に演奏会で聞いている事が大事。音楽を聞く人は何かを感じたいから音楽を聞く。クラシック音楽だとすると作曲家の再現が大事な要素で、特に日本の演奏家にとって楽譜から作曲家のメッセージを読み取る勉強が特に大切な事だと思う。
クラシック音楽を演奏するなら、音楽、美術、文学の総合芸術であるオペラを勉強すべきである。
磯部 周平
東邦音楽大学特任教授、元NHK交響楽団首席クラリネット奏者
自分はもしかしたら『天才』かも…と思う気持ちと、『凡クラ』なのでは…との葛藤の中に、真実が見つかるのでしょう。
ユーチューブの名演奏や作曲家の書いたメトロノーム記号の呪縛から逃げなければ…
本当の『愛』や『幸せ』も何処かにあるものでは無く、今ここに、自分の中にあるのかも…
人に説教する資格はありませんが…
十亀 正司
東京藝術大学非常勤講師、武蔵野音楽大学非常勤講師
人前で演奏するということ、それは取り組んでいる曲を自分を通して聞いている人に届けるということだと思います。自分のために演奏しているのではないということだと。そのことを思うと、多くの人がその届けるという作業が疎かになっていると僕は思いました。もっと聴衆者に対して音楽を展開して欲しい、語りかけて欲しいと思いました。
もう一つ思ったことは、ホールの特性を知るという大切さのことです。このホールは凄く響くホールです。曖昧なアタックは繋がって聞こえてしまいます。必要以上に速く吹くと、響きに埋もれてメロディが聞こえなくなってしまいます。そんなことを思いながら審査をしていました。
ブルックス・信雄・トーン
愛知県立芸術大学准教授
この度、第30回日本木管コンクールの審査員に迎えられて光栄です。今回は私は2回目ですが、前回の出演者よりもレベルが高かったような印象を持ちました。
1次予選では、4曲の無伴奏の演奏を聴いてすごく興味を持ちました。
最初、いろんなソロのスタイルがあるので難しいように思ったのですが、レパートリーに関係なく、皆さんの音楽性をもって大変スムースにいっていたと思います。
ところで、2次予選に15人しか選ばれないのはとても残念に思います。みなさん、全員すばらしい演奏者でした。
サトー ミチヨ
東京都交響楽団首席クラリネット奏者
皆さん一次予選お疲れ様でした。ここ数日で気温が下がり、乾燥も始まる中、体調の維持やリードの調整は大変だったと思います。1次予選通過者は本来の自分の実力プラス、コンディションをうまく整えていたのではないでしょうか。
参加者全員にお願いしたい事が2つあります。これは毎日ステージに立つ私がいつも心がけている事でもあります。
1つは音楽表現やテクニックを語る前に、楽器に健康な息をしっかり入れて健康な音を出すということ。個性や技術にばかり目がいき、自分がどういう音を出しているのか聴かずに演奏している人が多かったように思います。
2つ目は楽譜を正しく読むということ。速度表示から表現記号や強弱記号を書いてある通りにやる、そして自分の思い込みや都合や好みに走り自己満足のパフォーマンスに終わらないようにしたいものです。
亀井 良信
桐朋学園音楽大学准教授、東京音楽大学講師、洗足学園音楽大学非常勤講師
バランス良くとは、客観的に自分を見る事。なかなか難しい。
今から20数年前、あるプレーヤーに「色々な方向から勉強をしなくては」と一言かけられた事を良く思い出す。
聴衆の前で作曲家が書いた作品をどのようなバランスで自分を表現するか。
よく見て、よく感じて、よく聞く。制約がある中で自由になる事が西洋音楽の醍醐味。
1次は色々な事を発見できる所。多くの人に聞いてもらいたかった。
松本 健司
NHK交響楽団首席クラリネット奏者、東京音楽大学兼任准教授
みなさんの素晴らしい演奏を聴かせていただいて大変感動しております。技術的にも音楽的にも申し分ない演奏をなさっておられて、みなさんの主張を受け止める私たち審査員も集中力と体力を使う2日間でした。私の中の妥協点を現時点に設定して一次予選を聴けばほとんどの方が合格で二次予選に進出していただけます。ただしそれでは審査員としての職務を全うできないので、妥協点を少しだけ高くすると二次予選に進出なさる方は数人でしょう。もしこのステージが国際コンクールだったらと考えると果たして何人の奏者が二次予選、本選に進めるでしょうか。かつてアジア地区では最先端だった日本のクラリネット界は現在かなりの劣勢です。私たちに足りないものを見出す大切な時期だと思います。